小話:帰路

 特にその後何をする訳でもなく、綾の課題が終わる時間に合わせて生活衛生課の面々は解散した。翌日は多摩地方への遠出。日頃であればもう少しオフィスで駄弁っているのだが、英気を養うための判断だった。
山原の運転する車に澪と澪二は座っている。彼女らの話す今日の学校のこと、道端のノラネコの話をBGMに車は進行方向を直進していた。

『ついでに僕の方から『ちゃんとコッチも仕事してますよー』と喧伝けんでんしておこう』

「――って言ってたけど、そっち方面ではうまく行ったの? ヤマ爺」
「サブちゃん解放も近い? 大丈夫そ?」
「あたり前田のクラッカーさ。これでもこの生活もうん十年、どういう言い方すれば“上”が聞くかぐらい分かるよ」
「「ほーん」」
 そういうものなんだ、と相槌を打って澪と澪二は後部座席で姿勢を崩した。七時をとうに過ぎた空はすっかり暗く、ビルの明かりが鮮明になっていた。小さい頃からの習慣となりつつある遠い親戚の送迎を享受しながら、学校指定の副読本を取り出す。
「一問一答ゲェーム」
「いえーい」
「次の小テストの対策だからヤマ爺も強制参加ね」
「いうてもう爺だからなー忘れてること多いぞ」
「オレもワタシもちゃんと覚えてるってこと確認する会だからモーマンタイ!」
「教える方がー覚えるのの三倍難しい……を誰か言ってたから採用したのです。じゃあヤマ爺答えてね」
「はいはい」
(これは……僕が全部答える感じなんだな)
 伊瀬いせ家まではこのまま行けばあと三十分。山原が伊瀬父に呼ばれて夕飯の相伴しょうばんにあずかるまであと四十五分。

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