揺れが落ち着いた矢先に見えたものは豪華なランプとカーペット。どうやら洋風の室内に迷い込んだようだ。この空間はどうも不思議で、つみきやビー玉がふわふわ宙に浮いている。
何より、先程まで人間であった喜一が愛らしい猫のぬいぐるみとなっていた。
「かばんもない……」
ぽてぽてと猫のぬいぐるみの姿のまま、広々とした部屋をちょこまかと動く喜一の前に、一匹の黒猫が飛び降りてきた。
「ようこそ。いらっしゃい、かわいいキイチ」
「さっきの黒猫! ねえ、君がここにおれを連れてきたの? ここはどこ? なんでどうやって?」
「まあ。お喋りさんなのね。大丈夫、ここは夢の世界。時間ならいっぱいあるわ」
くすくす、と黒猫は飛び上がり、その姿を人形に変える。
「だから一緒に、いっぱい遊びましょう? 色褪せた世界に生きるカワイソウでカワイイキイチ」
「待って、質問には答えてもらってない!」
笑い声と共に姿を煙のように消した人形の輪郭を、短い手先で掴もうと喜一は跳ねる。
ナンデもナニも、夢にはムズカシイ理屈なんてないわ! さぁさぁ、ちょっぴりフシギな魅惑の世界へご案内〜!
高らかな声に合わせ、部屋の大きな扉が音を立てて開く。積み木に押し流された猫のぬいぐるみは、一回転して廊下に放り出された。

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