路地裏の向こうにようこそ - 2/2

 揺れが落ち着いた矢先に見えたものは豪華なランプとカーペット。どうやら洋風の室内に迷い込んだようだ。この空間はどうも不思議で、つみきやビー玉がふわふわ宙に浮いている。
 何より、先程まで人間であった喜一が愛らしい猫のぬいぐるみ・・・・・・・となっていた。

「かばんもない……」

 ぽてぽてと猫のぬいぐるみの姿のまま、広々とした部屋をちょこまかと動く喜一の前に、一匹の黒猫が飛び降りてきた。

「ようこそ。いらっしゃい、かわいいキイチ」

「さっきの黒猫! ねえ、君がここにおれを連れてきたの? ここはどこ? なんでどうやって?」

「まあ。お喋りさんなのね。大丈夫、ここは夢の世界。時間ならいっぱいあるわ」

 くすくす、と黒猫は飛び上がり、その姿を人形に変える。

「だから一緒に、いっぱい遊びましょう? 色褪いろあせた世界に生きるカワイソウでカワイイキイチ」

「待って、質問には答えてもらってない!」

 笑い声と共に姿を煙のように消した人形の輪郭を、短い手先で掴もうと喜一は跳ねる。

ナンデもナニも、夢にはムズカシイ理屈なんてないわ! さぁさぁ、ちょっぴりフシギな魅惑の世界へご案内〜!

 高らかな声に合わせ、部屋の大きな扉が音を立てて開く。積み木に押し流された猫のぬいぐるみは、一回転して廊下に放り出された。

   
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