積み木の群れから抜け出して数分、広い廊下を歩いて行く喜一。
そんな彼の目の前に、一枚の扉が突如降り注いだ。
「うわ!」
尻もちをついたぬいぐるみの体はたやすく倒れて、なかなか起き上がれない。
「ふふふ、大変なコトニなってるワね!」
「そんなこと言ってないで! コレ! 助けてよ!」
「キイチはぬいぐるみ初心者だものね。特別大サービスよ」
どこからともなく聴こえる黒猫の声に合わせて、喜一の体がふわりと持ち上がる。そして、その勢いに合わせてぬいぐるみは扉に衝突した。
痛みをこらえて上を見た喜一の視界には一枚の紙が降り注いだ。
「まずは小手調べよ。お屋敷を探索したかったラ、ソレで遊んでからにしてネ」
またもや空から聞こえた音声は、程なくして消えた。無音の空間で、彼は呆けてしまう。