つみきの部屋(前編) - 1/5

 積み木の群れから抜け出して数分、広い廊下を歩いて行く喜一きいち
そんな彼の目の前に、一枚の扉が突如降り注いだ。

「うわ!」

 尻もちをついたぬいぐるみの体はたやすく倒れて、なかなか起き上がれない。

「ふふふ、大変なコトニなってるワね!」

「そんなこと言ってないで! コレ! 助けてよ!」

「キイチはぬいぐるみ初心者だものね。特別大サービスよ」

 どこからともなく聴こえる黒猫の声に合わせて、喜一の体がふわりと持ち上がる。そして、その勢いに合わせてぬいぐるみは扉に衝突した。
 痛みをこらえて上を見た喜一の視界には一枚の紙が降り注いだ。

「まずは小手調べよ。お屋敷を探索したかったラ、ソレで遊んでからにしてネ」

またもや空から聞こえた音声は、程なくして消えた。無音の空間で、彼は呆けてしまう。