「神父様、神父様。どうか私の罪をお聞きください」
一人の女が、懺悔室で言い放った。神父と言われた男は仕切られた壁の向こうでただ座っている。
「私は、私はとんでもないことをしました。一人で勝手に憤って、友人にひどい事を言いました。――一瞬の出来事で、あの子が悪いことをしていると思い込みました。あの子はいい子なんです。非行に走るような子じゃないって、私……、私が一番分かって……、あの子……行方不明になるなんて考えもしなかったの」
女は支離滅裂に、涙声で目の前の神父に懺悔を繰り返す。時折泣いて、時折自身の腕に圧迫痕をつけながら、自身の思い違いという罪を語っていく。
「どうか、お赦しください。私の罪を赦して……」
「ええ。赦します。顔をお上げなさい」
優しい声に導かれ女が顔を上げた先には、壁のこちら側には居ないはずの神父が立っている。逆光となっているためその表情は窺い知れない。
「しんぷさま……」
「……大丈夫です。どうか気を楽に」
言葉の直後、神父の手が彼女の目を覆う。
その輪郭は溶け、女がその影に包まれていった。うめき声が聞こえたのは一瞬。女の姿は神父の影に跡形もなく飲み込まれた。
「お粗末さまでした」
神父が裾を直すような動作を見せる。
「どうかご友人と、私の中で仲直りしてくださいね」
『友人に暴力を振るった』と懺悔室にやってきた同じ制服の女を思い出し、男は穏やかに微笑む。
――次の日、十代の女性が突如行方不明になったというニュースが新聞の隅に書かれた。