燦々と日光が差し込む中、白い息を吐いて棗は一人雪かきをしている。ブロック状に切り取った積雪を道路脇へ押しやる作業を、既に三十分ほど小さな体でこなしていた。
「こんなもんかな」
流れる汗をタオルで拭い、彼女が身の半分はあるシャベルを持って数十メートル離れた我が家に戻ろうとした時、ギコギコという音が背後から近づいてきた。
「なつめちゃん。お疲れ様」
「栄寿さん」
栄寿と名付けられた百二十センチメートルほどの人形が、球体関節を曲げ伸ばし、銀髪を揺らして棗に近づく。両手に持っていたカイロをそのまま彼女へ手渡した。
「お昼ご飯ができたって、ご主人が言ってた」
「お父さんが? 分かった。すぐ行こっか」
一人と一体が、薄く雪の張った手掘りの道を歩いていく。数歩進む間にも、雪の重みで枝がきしむ音が周囲でこだましている。玄関前へ着くと、棗に腕を引かれていた栄寿が目を少し伏せた。