くしゃくしゃにしながらも全身を使って紙を裏返せば、積み木のイラストが一面に描かれていた。
(見るからににヒントじゃんこれ。積み木、文章。つみきつみ、き……つみ「き」? 積み「き」?)
喜一はまじまじと紙をにらみ、文字列に手を伸ばす。薄茶色に塗られたマス目を叩いて、裏面を見返した。
(そっか、なんでこんな書き方になってるんだろうと思ったけど、この一マスが積み木なんだ!
ということは……)
ブツブツと声を出しながら、小さな手を紙に滑らせる。床に手を打つ軽い音だけが一、二分流れた。
「紙が欲しいけど……。右から?読むんだから。せ、い、か、いは――じょう。正解はイジョウ!
って、答えがわかってもどうしたら――」
ぬいぐるみの短い手足をバタつかせて、喜一は窓の外を見る。紫に彩られた空にはいかにもな星が吊り下がっていた。
ふと、正面の扉を見る。先ほどまでは無かったはずの窪みが、彼を歓迎した。
「なに? え? 三角のくぼみと円柱? しかも位置高いし!」
地団駄を踏んでいた体がピタリと止まる。
「これ、もしかして積み木をはめろって事?! あの部屋から持ってきて?」
うわぁ、と項垂れていた体は、背筋を曲げながら来た道を引き返した。
