「今日からあなたの世話することとなった。ポチだ」
ウサギの形をしたぬいぐるみは無機質にも聞こえる抑揚のない声で、己の主人となる少年に声をかけた。ポチと呼ばれたぬいぐるみは二本足で自立し、メイド服を纏い、身動きを取らず少年を見ている。少年は呆然として、自分の父親の隣に立つ白い『それ』を眺めた。
「父さん。これは……」
「今日からうちで雇うことになったポチちゃんだ。リュウ。私はこれから仕事だけど、二人で仲良くやるんだぞ」
「ぁぇ……、っ……、はい」
「承知」
屋敷の主人である父親が姿を消す。広い居間の片隅で、リュウ少年とポチは取り残された。(これは、どうしたら……)「リュウよ」
「っ?! は、はい」
「現在時刻は朝七時。朝食の準備をするとしよう。リクエストはあるか?」
「な、なんでもいいです」
「承知した」
うさぎのぬいぐるみは無機質に返事をするとダイニングキッチンへ向かい、いきなり手先から刃物を出した。奇想天外の出来事に少年は短く大声を上げる。
「待て! 待て待て待てなにそれ?!」
「ナイフだが」
「メイドのロボットがなぜ体内にそんなナイフを持って? え?」
「オレは本来戦闘用だ。棚卸しで廃棄になりかけたところを父君に拾われた形となる。想定外の業務ではあるが護衛と考えれば良い。あなたを安全に子守りして見せよう」
胸を張っているポチに対して、リュウは頭を抱える。
「……心臓に悪いので、せめて調理器具は使ってください」
「ビームで焼いた方が早いのだが……、わかった」
(ビーム、ちょっと見てみた――いやだめだ)
ナイフを綿の下に格納し直して調理を始めたポチを、リュウは遠くからずっと見ていた。「おいしい」
「そうだろう。オレはそのようにプログラムを入れてもらったからな。オレも食事にしよう」
そう言ってポチはロボット用の液体状の携行食料を摂取し始めた。
「……ずっと気になってたんですけど」
「なんだ」
「なんでメイド服を着てるんです?」
「父君が可愛いからとくれた。存外この仕事着をオレも気に入っている」
(父さん、女の子だと勘違いしてるのでは……?)
自慢げなポチを尻目に、リュウは虚空を見つめる猫の様になった。
ウサギの形をしたぬいぐるみは無機質にも聞こえる抑揚のない声で、己の主人となる少年に声をかけた。ポチと呼ばれたぬいぐるみは二本足で自立し、メイド服を纏い、身動きを取らず少年を見ている。少年は呆然として、自分の父親の隣に立つ白い『それ』を眺めた。
「父さん。これは……」
「今日からうちで雇うことになったポチちゃんだ。リュウ。私はこれから仕事だけど、二人で仲良くやるんだぞ」
「ぁぇ……、っ……、はい」
「承知」
屋敷の主人である父親が姿を消す。広い居間の片隅で、リュウ少年とポチは取り残された。(これは、どうしたら……)「リュウよ」
「っ?! は、はい」
「現在時刻は朝七時。朝食の準備をするとしよう。リクエストはあるか?」
「な、なんでもいいです」
「承知した」
うさぎのぬいぐるみは無機質に返事をするとダイニングキッチンへ向かい、いきなり手先から刃物を出した。奇想天外の出来事に少年は短く大声を上げる。
「待て! 待て待て待てなにそれ?!」
「ナイフだが」
「メイドのロボットがなぜ体内にそんなナイフを持って? え?」
「オレは本来戦闘用だ。棚卸しで廃棄になりかけたところを父君に拾われた形となる。想定外の業務ではあるが護衛と考えれば良い。あなたを安全に子守りして見せよう」
胸を張っているポチに対して、リュウは頭を抱える。
「……心臓に悪いので、せめて調理器具は使ってください」
「ビームで焼いた方が早いのだが……、わかった」
(ビーム、ちょっと見てみた――いやだめだ)
ナイフを綿の下に格納し直して調理を始めたポチを、リュウは遠くからずっと見ていた。「おいしい」
「そうだろう。オレはそのようにプログラムを入れてもらったからな。オレも食事にしよう」
そう言ってポチはロボット用の液体状の携行食料を摂取し始めた。
「……ずっと気になってたんですけど」
「なんだ」
「なんでメイド服を着てるんです?」
「父君が可愛いからとくれた。存外この仕事着をオレも気に入っている」
(父さん、女の子だと勘違いしてるのでは……?)
自慢げなポチを尻目に、リュウは虚空を見つめる猫の様になった。