本編

つみきの部屋(前編)

 積み木の群れから抜け出して数分、広い廊下を歩いて行く喜一きいち。そんな彼の目の前に、一枚の扉が突如降り注いだ。「うわ!」 尻もちをついたぬいぐるみの体はたやすく倒れて、なかなか起き上がれない。「ふふふ、大変なコトニなってるワね!」「そんな…

路地裏の向こうにようこそ

 中学校からの帰り道。安良あら喜一きいちは手首までかかるおろしたての学ランの袖をまくりながら、葉桜に囲まれた公園を一人歩いていた。 ――ニャオーン 喜一が振り向いた先には一匹の黒猫。一瞬、彼の気配に反応したかのように金色の瞳を向けたと思うと…